「オルタナティブスクール」という言葉はまだ日本では認知度が低く、フリースクールを調べる課程で初めて知ったという方も多いのではないかと思います。この記事ではオルタナティブスクールとはどういった施設なのか、フリースクールとどう違うのか、その種類と特徴を紹介していきます。
オルタナティブスクールとは
「オルタナティブ」とは英語で「alternative」と表記し、「もうひとつの」という意味を持っていて、公立でも私立でもない「もうひとつの学校」という意味で使われています。本来はオルタナティブスクールはフリースクールやホームスクール、無認可校など総称になるのですが、現在日本ではオルタナティブスクールの明確な定義がないので、一条校(学校教育法第一条に定められている、いわゆる公の学校)やフリースクールとは別の、「もうひとつの学校」という意味で使われることもあります。ヨーロッパやアメリカの哲学的思想を元にしている「オルタナティブ教育」を取り入れているのが特徴となります。
オルタナティブスクールでは一般的な教育の方法とは異なり、個人が尊重されることを重要としているので、子供の自主性に基づいた教育が行われる事が多く、その為「教師」という立場で大人が接するのではなく、あくまで子供をサポートするスタッフという立場に位置づけている事が多いです。
また、オルタナティブスクールはその多くが指導要領や運営体制などが法で定められている公教育のものとは違うので、NPO法人や一般財団法人として運営されているものが多く、学校法人として認可されているのはごく一部です。
フリースクールとオルタナティブスクールの違い
現在日本では「フリースクール」というと不登校や引きこもりになった子供が日中の時間を過ごす場所というイメージが強いですが、オルタナティブスクールは一条校とは違う教育方針や運営体制に共感した家庭が選択するという違いがあります。「子供の自主性を尊重し、自由に育てたい」、「子供の個性が強いので一条校の雰囲気に合わない」、「子供が学校に行くのを嫌がるようになったので環境を変えたい」などの理由から選ばれる事が多いです。
オルタナティブスクールの種類と特徴
オルタナティブスクールは、取り入れている教育法によっていくつかの種類に分かれます。代表的なものを紹介させていただきます。
1、シュタイナー教育
オーストリアの哲学者ルドルフ・シュタイナーが提唱した教育思想で、子供の個性を尊重し、芸術活動を通して自由な自己決定が出来る人間を育てるという教育法です。人は7年ごとに成長の節目を迎えるとし、0歳から21歳までを3分割して発達段階に合わせた教育法を提唱しています。
シュタイナー教育の小中学校では基本的に8年間一貫教育となり、小学校1年から中学校3年まで同じクラスで学び、一人の担任が継続して担当します。また数週間続けて毎朝同じ科目を学ぶ、独自の「エポック授業」をはじめとする独特のカリキュラムも特徴的です。
2、サドベリー教育
アメリカのボストン郊外「サドベリー・バレー・スクール」の教育理念を元にした教育方法で、決められたカリキュラムは一切なく、テストも授業もないという斬新な教育スタイルです。子供が興味を持ったことを自由に学べ、子供の好奇心を伸ばすのに効果的と言われています。
また他の教育方法にない大きな特徴として、生徒、学校職員、保護者が一人一票の投票権を持っていて、学校運営に参加するという点が挙げられます。子供でも自分の意見が学校運営に反映される訳なので責任感や自主性、行動力などが育まれるとされ、別名「デモクラティックスクール」とも呼ばれています。
3、サマーヒル教育
イギリスのレイストンという街でA.S.ニールにより開設された全寮制のフリースクールが発端で、授業の選択から参加、不参加まで生徒自身の判断で決定され、「自由な子供たちを育てる」ことを教育理念に掲げています。
サマーヒル教育は自由を大切にするという基本理念がありますが、その半面校則が多いのが特徴と言えます。一見相反するように見えますが、実は校則は全て子供たちで作っているものなのです。つまり、全寮制の学校で子供たちによる「自治」が行われることで、「必要なテーマは子供たち自身が決めて行くことが学びの本質」としています。
4、フレネ教育
南フランスで教師をしていたセレスタン・フレネにより創設された教育法で、「自由な学び」、「子供主体」という考え方をベースに学習環境を整えます。既存の教科書は使わず、授業も必要ないと考えていて、子供たちが集団生活の中で自分を発揮する事を目標としています。
その為に、「子供一人一人が持つ個性」と「多様な価値観を受け入れる協同性」と2大原理とし、オリジナル教材の作成や学校間での連携を充実させ、個性を伸ばすことに重点を置きながら、他者との関わりから自己を発展させる協同作業に力を入れています。その教育方法の主軸になっているのは子供が自作する作文で、教材として使用するものを投票で選んだ後、それについてディスカッションする事で、自由な学びを展開していきます。
オルタナティブスクールの中にはこのような具体的な教育方法を掲げていないところもあり、一部のフリースクールでもこういった教育方法を受ける事が出来るものも存在します。次に、オルタナティブスクールの特長を見ていきたいと思います。
1、子供の自主性が尊重される
子供の好奇心や興味を元に学習計画や生活する上での規則、全体行事などを決める事が多く、大人から押し付けるような教育の仕方はしません。
2、一人一人の個性を重視する
子供には一人一人個性があり、それぞれ必要な学びは異なるとし、基礎学習やテーマ学習を進める傾向にあります。
3、少人数で年齢はバラバラ
少人数なので密度が濃く、きめ細やかな教育が可能です。また、色々な年齢の子供たちが一緒に行動するので、対人関係も豊かに育まれます。
注意点、デメリットも紹介させていただきます。
1、認可校が少ない
オルタナティブスクールはほとんどが私立学校としては無認可となるので、毎日通っても法的には不登校になってしまいます。義務教育中は在籍する地元校から卒業資格を得る形になりますが、出席扱いになるかどうかは確認が必要です。
2、上級併設校が少ない
オルタナティブスクールは高校を併設しているところがごくわずかなので、高校に進学したい場合は一条校を選択せざるを得ない場合が多いです。その際に勉強法のギャップなどが生まれる可能性があります。
3、絶対数が少なく、費用が高額
まだまだ日本ではオルタナティブスクールの数が少ないので、通いたくても近隣に無い場合があります。また、私設の学校の為、公立校に比べると費用が高額になる傾向にあります。もちろん学校によって異なりますので確認するようにしましょう。
4、学校によって教育法に差がある
前項で紹介したように、掲げる教育法によって方針が大きく異なります。必ず説明会や体験入学に行って、子供と家族に合っているか確認するようにしましょう。
まとめ
日本ではまだ認知度の低いオルタナティブスクールですが、一条校による公教育では得られない学びや体験があるのはおわかりいただけたと思います。メリット、デメリットをしっかり把握して、一つの候補として考えていければ、視野が広がるのではないでしょうか。
WILL学園は学研エル・スタッフィングが運営する通信制サポート校とフリースクールが一緒になった新しい形のサポート校です。オルタナティブスクール同様に子供の個性、自主性を尊重し、一人一人に合った学びの形を提案しています。学園見学会や説明会も随時実施していますので、お気軽にお問い合わせください。
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