特別支援学校を卒業した後の進路選択は重要なステップです。
このコラムでは、特別支援学校を卒業後の最終学歴について説明するほか、主な進路先や就職率、就職先の探し方や就職相談先を解説します。特に、障がいや困難に直面した若者やその家族、また支援者や教育関係者など、特別支援教育に携わる全ての方々のために、就職や進学、生活設計に関する情報を提供していますので、ぜひご確認ください。
特別支援学校卒業後の進路先
特別支援学校卒業後の進路先は、主に
①進学
②就職
③教育訓練機関等への入学
④社会福祉施設などへの入所や通所
の4つが挙げられます。
ここでは、上記4つの進路先について解説していきます。
出典:文部科学省 特別支援教育資料https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/1406456.htm
進学
特別支援学校卒業後の進路先のうち、進学する方の割合は一般の高校卒業生と比べて低い傾向にあります。
その理由として、一般の高校と比べて特別支援学校のカリキュラムや教育方針が、進学よりも社会参加や就労準備に重点を置いている場合が多いためです。平成29年度に特別支援学校高等部を卒業した障がいのある方の数は、全国で18,321人です。卒業後の進路先は、社会福祉施設等の入居・通所者11262人、就職者6,029人、その他688人、教育訓練機関等276人、進学者66人です。特別支援学校卒業後の進路先のうち、進学する方の割合は極めて低く、全体の0.36%に過ぎません。
その内訳を見ると、進学者のうち大学への進学は2名であり、専攻科への進学が64名です。
この低い進学率の背景には、受け入れ先の不足が挙げられるでしょう。全国には僅か9校の専攻科しか存在せず、受け入れ先が極めて限られているため、障がいのある人が進学を選択することは非常に困難であり、選択肢は少ないです。
しかし、選択肢は限られているものの、専攻科では専門的な技術や職業を学ぶことができ、将来の就職や社会生活に役立てることが期待できます。また、特別支援学校内の進学コースや支援機関のサポートを受けながら、進学に向けた準備を行うケースもあります。
近年では、特別支援学校でも進学コースを設けているケースが増えてきており、進学する方の割合は、地域や学校によって異なりますが、徐々に増加している傾向にあります。
これは、障がいを持つ人々にも高等教育の機会が与えられることの重要性が認識されてきた結果だといえるでしょう。進学により、障がいを持つ人々が、自己実現や社会での役割を果たすための能力を高めることが期待されています。
就職
特別支援学校卒業後の進路先のうち、就職する方の割合は全体の32.9%です。就職者の内訳を見ると、約6,029人が就職しており、さまざまな職場で働いていますが、就職先の選択肢は、個々の能力や志向に合わせて多岐にわたります。障がいを持つ方が就職するのは、社会福祉施設や福祉サービス提供事業所、障がい者支援施設、更生施設、授産施設、医療機関などが多いです。これらの施設では、介護職、事務職、施設管理職、医療補助職などさまざまな職種で働くことができます。
また、一部の企業では障がい者雇用枠を設けており、障がいのある人々が技能職や事務職などで働くことが可能です。このような企業は、障がいのある従業員のニーズに応えるための施策を行い、職場における障壁を取り除くことで、障がい者が活躍できる環境を整えています。就職先や職種は個々の能力や適性によって異なりますが、適切な支援や配慮が行われることで、障がいのある人々も社会で自立し、意義ある仕事に従事することができます。
教育訓練機関等への入学
特別支援学校卒業後の進路先のうち、教育訓練機関等へ入学する方は約276人であり、全体の1.5%に相当します。この内訳を見ると、大学や専門学校などの教育機関に進学するケースが主です。教育訓練機関では、障がいのある人々に対してさまざまなスキルや能力を向上させ、社会での自立を支援するのが特徴です。在学中のカリキュラムでは、生活技能や職業訓練、社会生活への適応などを学ぶことができます。
また、一部の専門学校では障がい者向けの特別コースや支援体制が整っており、個別のニーズに合った教育を行っています。教育訓練機関への進学を選択する理由として、就職や社会生活に必要なスキルや知識を身につけることや、個人の興味や関心に基づいて専門的な分野を学ぶことなどが挙げられるでしょう。進学先やコースは、個々の能力や目標に応じて選択され、教育機関側も個人のニーズに合った支援を行っています。
社会福祉施設などへの入所や通所
特別支援学校卒業後の進路先のうち、社会福祉施設などへの入所や通所する方は、全体の約61.5%に相当します。これは、卒業生の約11,262人にあたり、社会福祉施設には、児童福祉施設、障がい者支援施設、更生施設、授産施設、医療機関などが含まれます。社会福祉施設への入所や通所を選択する理由は、個々の能力やニーズに応じた支援が行われていることが挙げられるでしょう。
特に、自立訓練(生活訓練)は、障がいのある人々が日常生活で必要なスキルや自己管理能力を向上させるための効果的な手段です。自立訓練では、食事の準備や料理、衣服の着脱、身の回りの清掃、買い物や交通機関の利用など、日常生活に必要なスキルを訓練します。また、社会的なルールやマナー、人間関係の構築なども訓練内容に含まれ、自立生活や社会参加に向けて不可欠な能力を身につけるのに役立ちます。自立訓練は、個々の能力や目標に合わせて設定され、専門スタッフによる支援が行われるのが特徴です。
そのため、特別支援学校卒業後の進路先として社会福祉施設の選択は、障がいのある人々が自己実現や社会での生活を築くための重要な選択肢の一つとなります。
自立訓練(生活訓練)に関してはこちらの記事にて詳しく解説しております。併せてお読みください。
特別支援学校卒業後の就職率
特別支援学校卒業後の就職率は年々上昇しており、その要因としては、法整備が進んできたことが挙げられるでしょう。年々、障がい者雇用の促進や支援に関する法律が整備され、企業に対して障がいのある人材の雇用を促す仕組みが整備されてきました。法整備が進んできたことにより、企業が積極的に障がい者を採用する動きが広がり、就職の機会が増えています。
また、就労支援機関の体制が充実してきたことも大きな要因の一つです。障がい者の職業訓練や就労支援を行う機関が増え、個々の能力やニーズに合わせた支援が行われるようになり、障がい者が職場での適切なサポートを受けながら働くことが可能になりました。
さらに、ダイバーシティの観点から、障がいのある方の積極雇用が目立ってきたことも重要です。企業が多様な人材を活用することの重要性が認識され、障がい者の雇用を促進する取り組みが広がっています。企業が障がい者の採用や雇用継続に積極的に取り組むことで、障がい者の社会参加や自立支援が進み、就職率が向上しています。特別支援学校卒業後の障がい者の就職率が年々上昇しているのは、これらの要因が重なった結果といえるでしょう。
今後も、法整備や支援体制の充実、企業のダイバーシティへの取り組みがさらに進むことで、障がい者の就職機会がさらに拡大していくことが期待されます。
特別支援学校卒業後の就職先の探し方
ここでは、特別支援学校卒業後の就職先の探し方について、具体的に解説していきます。
解説する内容は以下の通りです。
・障がい者雇用の窓口やエージェントの利用
・就労移行支援や就労継続支援施設の利用
・自立訓練(生活訓練)事業所の利用
障がい者雇用の窓口やエージェントの利用
特別支援学校を卒業した後に、自分に合った求人を見つけたい場合は、ハローワークの障がい者雇用窓口や障がい者に特化した就職エージェントを利用するのがおすすめです。これらのサービスでは、専門のキャリアアドバイザーが障がい者の特性や能力を理解し、適切な職場や求人情報を提供してくれます。
また、履歴書や面接の準備から就業後のサポートまで、きめ細やかな支援を受けることができるため、自分にぴったりの仕事を見つけたい方は、ぜひ積極的に利用しましょう。
就労移行支援や就労継続支援施設の利用
就労移行支援や就労継続支援施設は、障がい者が就労に向けてスキルを磨き、支援を受けながら自立した生活を送るための施設です。これらの施設を利用することで、障がいを持つ方々が社会で働く準備を整えることができます。就労移行支援施設では、障がい者が職業訓練や職場体験を通じて、実践的な技術や就労に必要な能力を身につけていくのが特徴です。個々の能力や希望に応じたカリキュラムが行われ、専門の指導員がサポートします。また、社会生活における基礎的なスキルや、職場でのマナー、コミュニケーション能力の向上も目指します。
一方、就労継続支援施設では、実際の仕事を通じて障がい者が生産や労働に参加し、自己成長や自己実現を目指すのが特徴です。施設内での作業や外部企業で行う作業を通じて、社会における役割を果たすためのスキルを磨きます。また、就労継続支援施設では、障がい者が自立した生活を送るための生活支援も行われることがあります。これらの施設を利用することで、障がいを持つ方々が自信を持って社会で働くための準備ができるのです。
また、施設内での経験やスキルを活かして、実際の就労先を見つける支援もしてもらえます。障がい者支援の専門知識を持つスタッフが、利用者一人ひとりのニーズに合わせた支援を行い、安心して自立した生活を送るためのサポートを行います。
自立訓練(生活訓練)事業所の利用
自立訓練(生活訓練)事業所は、障がい者が日常生活のスキルや自立支援を受ける場所です。
利用者は、料理や掃除などの家事や、交通機関の利用方法など、社会生活に必要なスキルを身につけることができます。
また、コミュニケーション能力の向上やストレス管理などの訓練も行われます。上記のようなスキルや能力の向上を通じて、利用者はより自立した生活を送るための準備ができるのです。自立訓練事業所を利用することで、障がいを持つ人が自分自身を理解し、自らの強みや課題を把握することにより、自分に合った職場や業種を見つける際に適切な判断ができるようになります。
さらに、就労移行支援や就労継続支援施設を利用する前の段階として、自立訓練事業所での経験や訓練を通じて、自分の能力や興味、適性を確認することができます。自立訓練事業所では、専門のスタッフが利用者のニーズに合わせた支援を行っており、安心して自立した生活を送るための準備を整えることが可能です。
障がいのある方向けの就職相談先
ここでは、障がいのある方向けの就職相談先について、具体的に解説していきます。
主な就職相談先は、以下の通りです。
・ハローワーク
・地域障害者職業センター
・障害者就業・生活支援センター
ハローワーク
ハローワークは、国が運営する公共職業安定所であり、障がい者向けの就職相談も行っています。求人情報の提供や職業紹介、職業訓練の案内など、幅広い支援を行っています。また、障がい者雇用に関する優遇制度や助成金の情報提供も行い、就職のサポートを行っているのが特徴です。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、地域に密着した職業訓練や就労支援を行っているのが特徴です。個別のニーズに合わせたキャリアカウンセリングや職場体験の提供、企業とのマッチング支援などを行い、障がいを持つ方々の就職までサポートします。地域の雇用情報や支援制度を網羅しており、地域社会との連携を重視したサービスを行っています。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、障がい者の就職支援や生活支援を行う専門機関です。専門のキャリアカウンセラーや専門職員が、利用者の個別ニーズに応じてサポートし、職業訓練や就労継続支援などを行います。
また、障がい者雇用に関する法律や制度に詳しく、就職先の斡旋や助成金の申請支援も行ってくれるのが特徴です。利用者の能力や要望に合わせたトータルサポートを行い、自立した就労と生活を実現するための支援をします。
特別支援学校卒業後の最終学歴とは
特別支援学校卒業後の最終学歴は、個人の状況によって異なりますが、通常は「高等支援学校卒業証明書」や「高等特別支援学校卒業証明書」などが与えられます。これらの証明書は、一般的な高校卒業証明書と同等の意味合いを持ち、一部の職場や大学・専門学校への進学が可能になるのが特徴です。
一方、障がい者雇用枠の求人では、特別な配慮や支援が行われることがあります。この枠組みでは、障がいの程度や種類にかかわらず、求人者にとって適切な職場環境が案内されます。求人した企業は配慮をしながら、障がい者の能力や意欲に応じて適切な仕事を振り分けるのが一般的です。
また、障害者雇用促進法に基づき、一定の割合の障がい者雇用を義務付けられている場合もあります。これらの取り組みにより、障がいを持つ個人も社会における活躍の場を広げることができるのです。
まとめ
特別支援学校を卒業後の進路選択は、本人や家族にとって重要な決断です。
このコラムでは、多様な進路選択肢や就職先の探し方、その相談先について解説しました。将来の方向性を模索する際に役立つ情報やアドバイスを提供し、進路に迷う若者やその家族が適切なサポートを得る手助けとなることを目指しています。
特別支援学校出身者やその関係者、支援機関や教育機関の担当者など、特別支援教育に携わる方々は、適切な進路選択とその実現に向けて、この情報をぜひご活用ください。
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