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統合失調症の方への接し方とは?家族や友人が発症した際の正しい対応・誤った対応を解説!

統合失調症の方への接し方とは?家族や友人が発症した際の正しい対応・誤った対応を解説! 統合失調症

統合失調症は誤解されやすい疾患であり、正しい理解とサポートを必要とするため、統合失調症の方と接する際は、理解と思いやりが重要です。このコラムでは、統合失調症の方との適切なコミュニケーションや支援方法について解説します。家族や友人が発症した際の正しい対応例、誤った対応例も示していますので、ぜひご確認ください。

統合失調症の方への正しい対応・接し方

統合失調症の患者への基本的な接し方として気をつけるべきポイントは、焦らないことや話を最後まで聞くこと、分かりやすく伝えること、言い争いや対立を避けることです。

以下に詳しい接し方をまとめていますので、早速みていきましょう。

焦らない

統合失調症は前兆期や急性期から始まり、消耗期、回復期を経て寛解の状態に至るのが通常です。消耗期までは目立つ症状が続きますが、症状が次第に和らぎ、少しずつ社会参加が可能になるのは回復期からです。通常、回復期に至るまでに数ヶ月から数年かかるといわれています。

寛解に至ったとしても、目立った症状が治まり穏やかな状態であるというだけで、また前兆期が訪れる可能性はあります。そのため、長い目で患者を見て「焦らない」ことが重要なのです。

統合失調症の患者は家族の顔色をよく見ているので、焦りを敏感にキャッチして無理をしてしまうことがあります。本来、まだ休息が必要な期間なのに飛ばしすぎては、症状のぶり返しや再発の危険が高まります。

統合失調症は再発率の高い病気です。再発しないためにも、無理をさせないことを心がけましょう。

参考:「統合失調症ナビ 4つの病期の特徴」

話を最後まで聞く

統合失調症の患者の話は、最後まで聞くようにしてあげてください。

急性期で陽性症状が出現し幻覚や妄想の話をしたり、認知機能障害が生じスラスラと話ができず詰まったりするかもしれません。話のつじつまが合わなくても、その真意を理解するために耳を傾けることが大切です。

時には、表情の変化や頷きなど患者の非言語コミュニケーションに注意を払いながら「〜ということ?」と要約すると会話がスムーズに進むかもしれません。

米国の心理学者であるカール・ロジャーズは「積極的傾聴」において、相手の立場に立ち気持ちに共感する共感的理解や、相手の話を評価せずに関心を持って聞く無条件の肯定的関心、分からない時はわかったふりをせず真意を確認する自己一致が重要であると説いています。

上記の態度は統合失調症の患者に接する際にも重要な態度です。

参考:「厚生労働省 こころの耳」

分かりやすく伝える

会話をする際はあいまいな言い回しを避け、一度に多くのことを伝えすぎないことも患者と接する際に注意すべきポイントです。

日本語はあいまいな表現が多い言語です。認知機能が低下し頭が働かない統合失調症患者にとって、混乱を招きやすい点に気をつけましょう。

例えば、「大丈夫」は混乱を招きやすい言葉の1つです。OKでもNGでも使われやすい言葉のためです。「買い物に行こう」と言われたら「大丈夫よ」ではなく「いいよ、行きましょう」と返答することで明確に意思が伝わります。

「買い物に行ったらあれを買って、病院に寄って薬をもらって、ガソリンスタンドに行って…」と一度に多くの予定を伝えすぎるのも避けてください。代わりに、場面ごとに「次は病院に寄って薬をもらいに行くからね」と区切って伝えるだけでも伝わりやすくなります。

言い争いや対立を避ける

幻覚や妄想などの陽性症状が出現し、患者が興奮していると、つい家族もつられて怒鳴ってしまったり、言い返してしまったりすることがあります。症状を理解し、患者が興奮している際には「怖かったね、一緒にいれば安全だから落ち着いてね」などと声をかけ、温かく見守ることが大切です。

第三者から見たら幻覚や妄想だとしても、本人の頭の中では真実に思えて、苦しいこともあります。そんな時に「静かにしなさい!」、「そんなわけない」と否定されるとつらくなり、ますます症状が悪化してしまいます。気持ちに寄り添う言葉がけをした方が治療的な対応になるでしょう。

興奮したら薬を飲む、静かで刺激の少ない部屋に行き落ち着くのを待つなど、あらかじめ対応を決めておけるといざ興奮する場面が生じた際でもスムーズに対応できます。

統合失調症の方への誤った対応・接し方

統合失調症の患者への誤った対応や接し方は下記の通りです。言っても分からないと決めつける、言動を責める、行動を制限する、批判的になるなどは避けるようにしましょう。

代わりにどのように接すれば良いのかについてもまとめていますので、早速みていきましょう。

言っても分からないと決めつける

病気だからといって、患者を子ども扱いしないことが大切です。例えば、症状が回復する過程でうっかり薬を飲み忘れたとしても、本人が気づくのを待たずに服薬を促すことはしないようにしましょう。

患者のプライドを尊重し、飲み忘れないための仕組み作りを手助けする方が、後々の本人のためにもなるものです。できることを増やすことで自立を促すこともできます。

薬の飲み忘れを防ぐためには、スマホのリマインダーや小分けのお薬袋の作成などが役立ちます。「どうせ注意しても分からない」と決めつけず、どうしたらできるようになるかを一緒に考えるようにすると良いですね。

一緒に考える際には、「どうしたら忘れなくなりそう?」と本人の内省を促すような声がけをできると、さらに効果的です。あくまで患者主体で解決できるように働きかけるのがポイントです。

言動に対して責める

患者の言動をむやみに責める発言をしないようにしましょう。

家族が患者の言動を責めたくなる背景に、家族自身の罪悪感が隠れていることがあるので気をつけてください。本人が何か良くないことをしたから、家族の育て方が悪かったから病気になったのではありません。

誰も責めないようにしてあげてください。誰も悪くないのです。

つい責めたい気持ちが湧いてしまう時は、家族自身に気持ちの余裕がなかったり、患者と距離が近づきすぎたりしている場合が多いものです。そんな時は、思いきって本人と離れて過ごす時間を作る方が良いこともあります。

患者はもちろん、家族も根を詰めすぎず、リフレッシュする時間を作り心のゆとりを保つことが大切です。穏やかな気持ちで過ごせるようになることは本人のためにもなります。ぜひ、積極的に自分を大切にする時間を作ってください。

参考:「統合失調症ナビ 日常生活での患者さんサポート方法」

行動を制限する

上記の「言っても分からないと決めつけない」と同様に、患者の行動を過剰に制限しないようにしましょう。

家族自身に心配や不安があったりすると、つい患者の行動を制限したくなりがちです。把握できる範囲に患者をおくことで、安心したい気持ちが強いと制限が生じるものです。

主治医とも相談しながら、治療の短期〜長期目標を設定し、今どこまでできると良いのかを確認しながら、少しずつ家族が手を離すことができると本人の自活力が高まります。

例えば、移動に関して短期的には1人でコンビニやスーパーなどの徒歩圏内へ外出することを目指し、長期的には公共の交通機関を利用して人混みへ出かけることを目指すなど具体的に設定できると良いです。

すぐにできるようになることを目指さず、焦らずに、今できることを確実に続けるイメージを持つことが大切です。

参考:「すまいるナビゲーター 統合失調症ABC 回復を促す家族の接し方」

批判的になる

患者の言動に対して、批判的になりすぎないように注意しましょう。

病気と本人の人格を区別し、問題は本人ではなく病気にあることを念頭におくのです。例えば、統合失調症の妄想症状の1つに「自分は天皇の血統だ」と思い込む血統妄想がありますが、言動を間に受けて「そんなはずがあるか」などと批判的になってはいけません。

妄想を否定すると、患者にストレスがかかりさらに妄想がひどくなり混乱してしまうことがあります。接する時には肯定も否定もせず、ただそのように思えてしまうことについて共感するのがポイントです。

また、妄想を聞き出しすぎると症状がひどくなることがあるので、話を聞きすぎないことも大切です。話を一旦受け止めながらも、早めに切り上げることを意識すると、患者が病的な世界にとらわれる時間を最小限にとどめることができます。

参考:「特定非営利活動法人 日本成人病予防協会 こころがもたらすからだの病気

統合失調症の方に対応する際の注意点

統合失調症の患者に対応する際の注意点は、早期の受診を促すこと、病気を理解すること、妄想や幻聴を否定しないこと、症状悪化のサインを理解することなどです。

以下に、注意点の詳細をまとめていますので、早速確認していきましょう。

早期の受診を促す

統合失調症に関して、病気を発症してから治療を開始するまでの期間は平均して1年であるといわれています。この未治療の期間のことを精神病未治療期間のDUP(Duration of Untreated Psychosis)と呼びますが、DUPが短ければ短いほど、予後は良いです。

また、病気を発症してから2~3年の期間は、その後の長期的な経過に大きな影響を与えることがわかっています。そのため発病後の数年間の間に適切な治療を受けることは、経過を良くするためにも必要不可欠なのです。

統合失調症に限らず、精神疾患の好発年齢は10~20代の若者であるといわれています。この時期に統合失調症かもしれない症状が現れたら、患者の周囲の家族はすぐに早期の受診を促すことが大切です。

参考:「厚生労働省 e-ヘルスネット 精神疾患の早期発見・治療の重要性」

病気のことを理解する

患者の周囲にいる家族や友人が統合失調症の症状をよく理解していないと、患者自身の甘えや怠けであると勘違いをしてしまい、声がけや対応を誤ります。そのため、ますます症状の悪化につながることがあります。それだけでなく初発や再発の兆候を見逃し、予後までも悪くする可能性があるのです。

患者の身近にいる人が病気のことをよく理解しておくことは、適切な声がけや対応を生み出し、予後を良くするために重要なことです。できれば普段の診察に付き添い、分からないことがあれば積極的に主治医に質問をしてください。

病院が発行している統合失調症に関するパンフレットを読み込むことも役立ちます。また、各都道府県で開催されている「患者家族の会」は、自分達と同じ立場の家族と悩み事を共有したり解決法を模索したりすることもできるため、おすすめです。

参考:「名古屋大学大学院 医学系研究科 精神医学・親と子どもの心理学分野 ご家族のための統合失調症との向き合い方」

妄想や幻聴を否定しない

患者と接する際は、病気の症状と本人の人格を切り離して考え、接することが大切です。病気の部分を間に受けて感情的になってしまわないように気をつけましょう。

特に、急性期には陽性症状である妄想や幻覚などの症状が増えることを知っておけると良いです。「父さんが毎日お前は怠け者だって俺の悪口を言うから眠れないんだ」と言われると、つい「そんなこと言ってないよ」と否定したくなるものです。

この場合は、否定するよりも「悪口を言われるのはつらいよな。でも父さんはそんなこと言ってないよ」と気持ちに共感しつつ、淡々と事実を伝えた方が患者は落ち着きを取り戻しやすいです。

妄想や幻覚は患者の中では現実に起きていることと思えるため、恐怖を感じるつらい症状です。つらさに共感することで、自分の気持ちを受け止めてもらえたと思ってもらえます。

症状悪化のサインを把握する

統合失調症は寛解と再発を繰り返しやすい病気です。寛解の状態を維持するためには、日常生活にふと現れる症状悪化のサインを見逃さず、適切にケアすることが大切です。適切な対処さえできれば再発を食い止め、影響を最小限に止めることが可能なためです。

以下のような兆候があれば注意してみてください。行動が急に活発になり落ち着きがなくなる、周囲の人に対して疑り深くなる、部屋にこもり外出をしなくなる、仕事上のミスが増えるなどは症状悪化のサインといえます。

少しでも「いつもと違うな、おかしいな」と思ったら受診を促し、主治医に相談をするようにしてください。ささいな変化も見逃さないことが大切です。

過労や不眠が続くと、症状が悪化しやすいことが知られています。生活リズムを整え、ストレスを心身に蓄積しないように気をつけましょう。

統合失調症の方が活用できる支援機関

統合失調症の方が活用できる支援機関は、以下の6つです。精神保健福祉センターや保健所、病院、家族会・自助グループ、地域活動支援センター、障がい福祉サービスなど多岐にわたります。

それぞれの違いをまとめていますので、早速みていきましょう。

精神保健福祉センター

精神保健福祉センターは各都道府県に設置されており、主に精神疾患の予防や健康促進、健康相談などを行う機関です。

センターには精神保健福祉士や臨床心理士(公認心理師)、保健師などの専門職が在籍していて、精神的不調が続いているが病院を受診すべきかなどの相談が出来ます。地域の医療機関を紹介してくれることもあります。

参考:「厚生労働省 全国の精神保健福祉センター」

保健所

保健所も各都道府県に設置されており、健康問題や統合失調症を含む精神疾患の相談を受けつけています。医師や保健師、精神保健福祉士などが対応します。

また、地域の拠点として各種相談窓口や医療機関との連携も行う機関です。どのように医療機関を探せば良いか分からないといった場合は、相談に乗ってもらえます。

参考:「厚生労働省 保健所管轄区域案内」

病院・診療所の精神科

統合失調症で利用できる病院は主に、精神科専門病院と総合病院内の精神科、精神科・心療内科クリニックなどがあります。

入院治療も検討しているなら精神科専門病院を、身体科の受診も必要であれば総合病院を、入院しないが定期的に診察を受けたい場合は精神科を、身体も同時に診てもらいたい場合は心療内科を選択すると良いでしょう。

参考:「衣ヶ原病院 精神科・心療内科においての病院とクリニックの違いとは?」

家族会・自助グループ

家族会・自助グループとは、統合失調症からの回復を目指す当事者やその家族が自主的に運営するグループをいいます。回復や社会復帰のための経験を分かち合い、励まし合うための集まりです。

「自分だけが悩んでいるのではなかった」、「思いを受けとめてもらえた」と仲間がいるという発見を通して安心や癒しを得られます。

参考:「公益財団法人 全国精神保健福祉会連合会 家族会について」 

地域活動支援センター

地域活動支援センターとは、病気や障害によって働くことが難しい方の日中の活動をサポートする福祉施設です。

目的に応じて3種類に分かれており、Ⅰ型は専門職が在籍し悩みの受付や地域の支援機関との連携を行います。Ⅱ型は身体機能の維持や向上を目的とした機能訓練や、対人関係を円滑にする社会適応訓練を行います。Ⅲ型は小規模作業所で軽作業の経験を積むことができます。

参考:「厚生労働省 地域活動支援センターの概要」

障がい福祉サービス

障がい福祉サービスとは、病気や障がいのある方が自立した社会生活を送ることができるよう、地域の実情により柔軟な事業形態をとるサービス全般を指します。

中でも生活訓練事業所では、食事やお金、体調管理など生活する上で必要な技能の習得を目指すことができるためおすすめです。その他、公共交通機関の利用のトレーニングも可能です。

参考:「厚生労働省 生活訓練事業」

学研のWell-being LABOについて

学研のWell-being LABOは、公認心理師監修のオーダーメイドプログラムで、あなたにとっての「Well-being(良い状態)」の実現を目指します。

「何だかつまらない」「うまくいかない」と感じてしまうような、会社や社会の枠組みから逆算された社会参加や、企業への就労ありきの社会参加ではない、その人らしさ(特性・能力等)を活かした社会参加の実現を、利用者様と一緒に試行錯誤しながら支援しております。)

まとめ

統合失調症の方への接し方を理解することは、彼らやその家族、友人にとって非常に重要です。

このコラムでは、統合失調症の方とのコミュニケーション方法やサポート方法を詳しく解説しました。正しい対応は彼らの生活の質を向上させるだけでなく、社会参加や精神的な健康にも良い影響を与えるでしょう。一方で、誤った対応は逆効果になることがあります。無理な要求や理解の欠如、差別的な態度などは症状を悪化させる可能性があるため、注意しなければいけません。

具体的な症状や状況に応じて適切な対応を行うことで、統合失調症患者の生活をより良くサポートすることができます。家族や友人、または一般の人々が、統合失調症の方との関わり方や支援方法を学ぶために、このコラムをご活用ください。

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