いじめが原因で子供が不登校になってしまったとき、子どもへの接し方がわからないという親御さんは少なくないと思います。この記事では、いじめが原因で不登校になってしまった子どもに親がしてあげられること、再登校へ導く方法を詳しく解説していきます。
不登校といじめの関係性
文部科学省の調査によると、いじめが原因で不登校になる割合は少ないとされています。しかし、別の調査では「いじめがきっかけで不登校になった」という子どもが多いことが明らかになっています。実際のデータを見ながら、いじめと不登校の関係性を詳しく解説します。
文部科学省の調査に基づく「いじめが原因の不登校」
まず、2017年から2021年にかけての「いじめの認知件数」を見ると、小学生の件数が最も多く、年々増加傾向にあることがわかります。中学生や高校生では増減はあるものの、一定の水準で推移しています。
次に、同じ期間の「不登校児童・生徒数」のデータを見ると、中学生が最も多く、不登校の増加傾向が続いています。小学生も増加傾向にあり、特に近年の伸び率が大きくなっています。高校生の不登校数は横ばい傾向にありますが、決して少なくはありません。
中学生が最も多く増加傾向にありますが、小学生は増加の割合が多いことも見て取れます。高校生は多少増減ありますが、少ないとは言えない数字で横這いです。
それでは、2021年度の不登校生のうち「いじめが原因」とされたケースを見てみましょう。文部科学省の調査によると、いじめが原因で不登校になった児童・生徒の割合はわずか4%と報告されています。これは、全体の数と比較すると少ない割合といえます。(参考:文部科学省「令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」)
文部科学省の調査では把握しきれないいじめによる不登校の件数
文部科学省の調査では、いじめが原因で不登校になった割合は4%とされています。しかし、NHKが中学生を対象に実施したアンケートでは、いじめが不登校のきっかけになったと回答した生徒が26%に上るという結果が報告されています。
この違いが生じた背景には、調査対象の違いがあります。文部科学省の調査は「学校側(教員)」が回答したものですが、NHKの調査は「生徒自身」が回答したものです。つまり、学校側では把握しきれていない「隠れたいじめ」が多く存在している可能性があるのです。実際には、不登校の原因としていじめが関係しているケースは、公式なデータ以上に多いと考えられます。
いじめが原因の不登校の実態
いじめを理由に不登校になる子どもが一定数いることは明らかですが、その背景には、現代ならではの要因が関係しています。
例えば、スマートフォンやSNSの普及により、いじめの形が変化しています。かつては学校内での直接的ないじめが中心でしたが、現在はオンライン上での「陰湿ないじめ」や「24時間続く嫌がらせ」が増えています。これにより、学校を休んでも精神的に休まらない状況が生まれ、不登校の長期化につながるケースもあります。
また、共働き家庭の増加により、親子のコミュニケーションが減少し、子どもが抱えるストレスに気づくのが遅れることもあります。「学校へ行きたくない」と子どもが言い出したときに、すでに深刻ないじめを受けている可能性もあるのです。
さらに、いじめの社会的認知度が高まり、「無理に学校へ行かなくてもいい」という考え方が広がったことも、不登校の選択をしやすくしている要因の一つと考えられます。
親がしてあげられることとは
いじめと不登校の関係を見てきましたが、実際に子どもが不登校になってしまったとき、親はどう対処してあげたらいいのか。順に見ていきましょう。
子どもの気持ちを受け入れる
いじめを受けた子どもは、精神的にも肉体的にも疲れ果てています。そのため、まずはお子さんの気持ちをしっかり受け止め、安心できる環境を家庭内に作ることが最優先です。
「どうして学校に行けないの?」と問い詰めるのではなく、「つらかったね」「安心していいよ」といった言葉をかけ、子どもが気持ちを話しやすい雰囲気を作りましょう。
また、無理に学校へ戻すのではなく、一度しっかりと休む時間を確保することで、お子さんの心の回復を促すことが大切です。
信頼関係を築きながら少しずつ会話を増やす
いじめにより自己肯定感が大きく低下した子どもは、他者と関わること自体に不安を感じている場合があります。まずは、親子の信頼関係を築くことを意識しながら、焦らずゆっくりとコミュニケーションをとることが重要です。
最初は無理に深刻な話をしなくても構いません。好きなゲームやアニメの話、日常の小さな出来事など、子どもが興味を持てる話題から会話を増やしていくとよいでしょう。
子どもに合った活動を見つけて自己肯定感を育てる
子どもが少し元気を取り戻してきたら、無理のない範囲で興味のあることに挑戦させるとよいでしょう。学校に通うことだけがすべてではなく、好きなことに取り組むことで、自己肯定感を高めることもできます。
例えば、オンライン学習や趣味の習い事、ボランティア活動など、子どもが前向きに取り組めることを一緒に探してみましょう。
学校や支援機関と連携しながら選択肢を広げる
学校と連携することは重要ですが、必ずしも再登校を目標とする必要はありません。学校内の環境が改善されていない場合、無理に復帰させることが逆効果になることもあります。
必要であれば、教育委員会の適応指導教室やフリースクールなど、別の学びの場を検討するのも一つの選択肢です。お子さんが安心して学べる環境を一緒に探していきましょう。
いじめによる不登校への対応策と選択肢
いじめが原因で不登校になった場合、解決策は一つではありません。無理に学校に戻ることだけが選択肢ではなく、お子さんが安心して学び、成長できる環境を見つけることが重要です。
ここでは、不登校の子どもが次のステップへ進むための選択肢を紹介します。
在籍校へ復帰する(再登校)
在籍している学校に戻ることを目指す方法です。ただし、「不登校=すぐに学校へ戻るべき」と考えず、子どもが安心して過ごせる環境かどうかを優先することが大切です。
・学校生活のリズムを取り戻しやすい
・友人関係を修復できる可能性がある
・進学や進級への影響が少ない
・いじめの加害者がいる場合、再発のリスクがある
・子ども自身が不安を抱えている場合、無理に戻ると逆効果になる
まずは学校側としっかり相談し、子どもにとって負担が少ない形で復帰できるかを考えましょう。
他校へ転校する(環境を変える)
いじめが学校環境に起因する場合、転校は有効な選択肢の一つです。新しい環境でリスタートすることで、子どもの負担を軽減できる可能性があります。
・いじめの加害者と物理的に離れることができる
・新しい人間関係を築きやすい
・環境が変わることで気持ちがリフレッシュされる
⚠ 注意点
・転校先でも馴染めない場合、新たなストレスになる可能性がある
・学習環境や校風が合わないと、かえって負担になる
転校する場合は、事前に学校見学をする、教育方針を確認するなど慎重に選ぶことが大切です。
適応指導教室(教育支援センター)に通う
各自治体が運営する「適応指導教室」は、不登校の子どもが徐々に集団生活へ適応するための支援施設です。
・小規模な環境で無理なく学習できる
・同じような境遇の子どもと交流できる
・学校に行かなくても「出席扱い」になる場合がある
・在籍校への復帰が前提になっているケースが多い
・利用するまでに申請手続きが必要で、数ヶ月待つ場合もある
在籍校への復帰を目指すなら、有力な選択肢の一つです。自治体によって対応が異なるため、事前に確認しましょう。
フリースクールを利用する(学びの選択肢を広げる)
フリースクールは、学校以外で学ぶ場として注目されています。学校の枠にとらわれず、個別対応で子どもに合った教育を受けることができます。
・自由な学び方ができ、プレッシャーが少ない
・子どもの個性に応じたサポートを受けられる
・出席認定が受けられるスクールもある
・進学サポートを行うスクールもある
・運営方針が学校ごとに異なるため、合う合わないがある
・費用がかかる場合がある
学校復帰を目指さなくても良い選択肢として、フリースクールは有力です。どんな学び方が合うのか、子どもと相談しながら選ぶことが大切です。
まとめ
いじめが原因の不登校は、子どもに合った環境を見つけることが最優先です。
無理に再登校を目指すのではなく、子ども自身の気持ちを尊重しながら、最適な選択肢を考えていきましょう。
学研WILL学園はフリースクール(中等部)と通信制サポート校(高等部)が一緒になったスクールです。少人数制を採用しているので、人間関係に悩んでいるお子さんでも通いやすくなっています。
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